研究概要 |
本年度の研究成果,および得られた知見は以下のとおりである. 1.ロバスト性をもつ多重パスメッセージ転送ネットワーク(MMFN)の数理モデルの構築 モバイルエージェント間の位置透過な通信のためのMMFN(multi-path message forwarding network)を提案し,グラフ理論および論理システムに基づく厳密な数理モデルを構築した.各々のMMFNは整数nで表される次数により分類され,n次のMMFNにおいては,故障ノード数が高々n個であるならば,すべてのノードからターゲットへのパスの存在が保証されることを示し,MMFNはロバスト性(robustness)をもつことを明らかにした. 本モデルは位置透過性をもつ既存の他の高性能なネットワークモデルのいずれかを置き換えようとするものではなく,既存のモデルに取り入れて,ネットワークのロバスト性を任意の次数にまで改善するために有効である. 2.提案する数理モデルの検証 (1)健全性,完全性の証明 ネットワークの動的変化を記述する推論規則からなる論理システムLnを定義し,LnはMMFNのみ生成するという意味で健全である(sound)こと,およびすべてのMMFNは論理システムLnにより生成されるという意味で完全である(complete)ことを証明した. (2)論理システムLnの計算量 Lnの時間計算量の上限と,Lnの領域計算量の上限を示した.次数nが与えられたとき、時間計算量は(ネットワークのノード集合の大きさに独立で)定数であり,領域計算量はネットワークのノード集合の大きさに比例する.
|