動的電圧制御の基で回路を正常動作させる場合、動作電圧の異なる領域間をまたいで接続されている信号線にレベルコンバータを付加するだけでは、動作電圧の変動によりトランジスタのスイッチング速度が上下するため、動的電圧制御を使用しない場合においては想定していなかった信号遷移が発生し、回路が正常に動作しない可能性がある。また、レベルコンバータを追加することによりレイテンシが増加するため、パフォーマンスが低下する可能性がある。従って、遅延が変動しても正しく動作する適切な個所にレベルコンバータを挿入する必要がある。本年度は、従来提案されているマルチタイミング・インタフェース回路に対して、電圧レベルコンバータを挿入する位置を検討し、遅延が変動しても正しく動作するインタフェース回路を設計した。また、SPICEを用いたシミュレーションにより正しく動作することを確認し、スループット・レイテンシを評価し、電圧レベルコンバータを挿入することによるオーバーヘッドは小さいことを確認した。 さらに、製造時のプロセス変動、動作時の電圧・温度変動に伴う遅延変動に対して、速度性能の高い回路を実現するための手法の一つであるSDIモデルに基づく設計に関して、速度性能の高い束データ方式のデータ転送を行う非同期式回路を実現するスタンダードセルライブラリ及び遅延ライブラリを設計した。また、それらライブラリを用いて論理合成ツールDesign Analyzerを用いてベンチマーク回路を設計し、その有効性を確認した。
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