本研究では代数マルチグリッド(AMG)法による高速かつロバストな連立一次方程式の求解法について研究を行った。まず、同手法の高速化について、岩下らが開発してきたガウス=ザイデルスムーザベースのAMGソルバを並列化し、1ノード128CPUを持つ大規模SMP型並列計算機システムFujitsu HPC2500に実装した。ガウス=ザイデルスムーザは逐次型の手法でありそのままでは並列化できないが、本研究ではILU分解前処理の並列化等で利用されているマルチカラーオーダリングをAMG法に導入することを提案した。本ソルバを3次元電磁場解析プログラム内で評価した所、並列化に際するオーバヘッドである反復回数の増加をほとんど抑制し、かつ高い並列化効率を得ることができた。この研究成果はIEEE Transaction on Magneticsに投稿され、発表予定となっている。次に、AMG法のロバスト化については、ILUスムーザベースのAMG法を開発し、実装を行った。ILUスムーザベースのAMGソルバについても並列化を行ったが、その際、ILUスムーザに関連した複数のパラメータを適切に設定することが重要であることが新たに発見された。AMG法はブラックボックス型のソルバであることが大きな特徴(長所)であり、並列化に際してもユーザから提供される最小限の情報で高い並列化効率を得ることが求められる。そこで、ILUスムーザにおけるパラメータ自動設定のために、ILUスムーザの効果に関する簡便な評価法を考案した。同手法をMatrix Marketにより取得したデータにより評価し、高い実用性を検証した。本研究成果は国際学会発表、論文誌発表については準備中であるが、国内学会の発表は既に行っており、高い評価を受けている。そこで、ILUスムーザベースのAMG法の性能改善については来年度も継続的に研究を行っていく予定である。
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