研究概要 |
高速回線の普及に伴い,例えば数千人規模で音声や共有ホワイトボードによる会議などの実時間グループ通信を行いたいといった要求が高まっている.そのようなグループ通信向けのインフラとしてアプリケーション層マルチキャスト(ALM)が最近注目されている.しかしALMの既存研究の多くは基本的に小規模グループを仮定し,マルチキャスト木の構築に単一の管理ノードを仮定している.これにはプロトコル設計が簡潔になる利点があるが,グループ規模拡大に伴い,管理ノードの過負荷などの弊害を生じるため,一定以上のグループ規模には分散管理方式(以下分散型)のALMが望ましい.本研究では,中規模実時間グループ通信向けの分散型ALMプロトコルの考案,設計及び性能評価実験を行う.さらに提案プロトコルに基づくミドルウェアを実装し,実証実験を行う.これにより,IPマルチキャストに依存しない中規模グループ通信環境の実現を目指す.平成17年度は,平成16年度に設計した基本プロトコルに対し,エンドホストの参加離脱に対する柔軟な処理機能やエンドホスト間レベル格差を吸収する機能を追加した.具体的には,エンドホストの離脱によりマルチキャスト木が切断された場合も,基本プロトコルが収集した木情報を利用し,マルチキャスト木の遅延増大や帯域減少を抑えるような再接続ポイントを自律的に発見するプロトコルを設計した.またエンドホストのアクセス帯域と処理能力レベルを,そのエンドホストが扱えるマルチキャスト木の最大枝数(次数)に対応させることで,ボトルネック回避問題を次数制約つきマルチキャスト木遅延最小化問題に帰着し,この間題の近似解を自律分散的に求解する機能を組み入れた.設計したプロトコルの性能評価をシミュレーション実験により行い,数百から千ノード規模のグループへの適応性を示した.
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