ネットワークにおける高速かつ大容量な伝送を可能とする技術への要求を満たすために、光伝送技術を用いた研究が活発に進められているが、パケット交換技術に基づいたアーキテクチャをとる限り、個々のコネクションに対する高品質通信の実現は非常に難しくなっている。そこで、各ノード計算機を接続している光ファイバを、インターネットとして利用するのではなく専用の通信路として利用し、WDM技術を用いた高速な通信チャネルとして活用するλコンピューティング環境を提案する。すなわち、各ノード計算機と接続しているネットワークを仮想的なリングネットワークとして利用し、このリング上にデータを載せる、あるいは伝送することにより、高速・高品質通信を可能とする技術である。 本研究では、λコンピューティング環境上に仮想光リングを構成し、光リング上にデータを載せることにより、波長を仮想的な共有メモリとして利用するモデルを対象としている。このモデルでは、広域分散システムにおける共有メモリと通信チャネルの区別の必要がなくなり、計算機間の高速なデータ交換が可能になる。この共有メモリを用いて並列計算を行う際のメモリアクセスの競合回避方法、データの一貫性制御、同期方法の提案、評価を行っている。具体的には、並列計算用のアプリケーションプログラムを用いたシミュレーションを行い、その結果、広域な光リング上での共有メモリシステムが有効であること、特に同期処理が少ないプログラムにおいて並列化効果の高いことがわかった。
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