研究概要 |
本研究では,超高速ネットワーク時代における豊かな情報サービスを実現するための高性能なサーバ技術を2年計画で開発する.特に,従来のオペレーティングシステムの実装にみられるような,高度な仮想化を伴うオーバヘッドの大きい処理機構ではなく,近年の高いハードウエア性能を十分に発揮するための低レベルなI/O処理技術を基礎とした,システム技術のフレームワーク開発を目的としている. 平成16年度は,Webサーバのような多数のTCPコネクションを管理するシステムを対象として,数千から数万もの同時コネクションを効率よくサポートするための基礎技術を開発した. その一つの成果は,多数のコネクションを多重処理するサーバにおいて,細粒度の実行間隔制御を行うことによって性能を向上する技術である.本技術では,高い精度で実行を制御するために実時間スケジューリングを用いている点がユニークな点である.一般的にこうした高度なスケジューリング方式は逆にオーバヘッドが大きいことが多い.しかし,本研究による実装では,そのスケジューリングに由来するオーバヘッド増加を,I/O処理におけるオーバヘッドの削減が大きく上回り,全体としてのプロセッサ利用率が大幅に軽減し,最終的なサービススループットも大きく向上することが実証された. もう一つの成果は,多数のコネクションの多重化処理そのものの効率化を図るミドルウエアの開発である.従来のポーリングを主体とした処理方式では,オーバヘッドが大きく,サーバにおける性能のボトルネックであることが多かった.本研究では,ネットワークカードからのイベントをより効率よく処理するために,シグナル駆動によるコネクション多重処理ミドルウエアを開発し,高い性能が達成されることを実証した.
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