研究概要 |
本研究では,ステガノグラフィの技術をベースとしたマルチメディアコンテンツに対する大容量データハイディングの手法を開発し,それを用いてマルチメディアコンテンツ埋め込み型のファイルシステムを実現することを目的としている.埋め込まれた状態のファイルシステムの存在は知覚されることはないため,秘密データを格納するのに用いることができる. さて従来のデータハイディングの手法では,埋め込み対象となるメディアは単一のファイル(コンテナ)であった.しかしそのような場合,埋め込み容量に明示的な制限が生じるため,現実的なサイズのファイルシステムを構築することはほとんど不可能であった.そこで本研究では,コンテナに埋め込むペイロードすなわちファイルシステムのイメージを多数のコンテナに分散して埋め込む枠組みを新たに構築した. 平成17年度は,前年度に開発した(非可逆圧縮されない)画像への分散埋め込み型ファイルシステムのプロトタイプの改良を主に行った.まずプロトタイプではコンテナを画像に限っていたのに対し,コンテナの種類ごとに適宜モジュールを切り替えて処理できるようにした.なおモジュールを追加するのにシステム本体の実装を一切変更する必要はない.さてプロトタイプではコンテナの情報をルートコンテナという特別なコンテナ一つに埋め込んでいた.これはルートコンテナの容量によって利用できるコンテナの数に制限が生じることを意味していた.そこで,ルートコンテナにつづくコンテナにも他のコンテナの情報を埋め込めるように拡張を行った.またプロトタイプではペイロードの安全性を高めるために,(埋め込み容量を犠牲にして)コンテナの先頭にランダムな空白領域を作っていた.そこでペイロードを暗号化するために擬似乱数置換と擬似乱数列を用いるようにすることで,このオーバーヘッドを解消した.
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