本研究では、提案する弾性物体の汎用モデルの有効性の検証を目的として、人体の柔軟組織部に本モデルを適用した人体モデルを構築し、モデルによる人体動作の生成シミュレーションを実現した。 スポーツや医療、リハビリテーションなどの分野において、計算機内に構築された仮想的な人体(以下人体モデル)を用いた動作解析や評価が試みられているが、人体モデルによるシミュレーションでは、患者に負担を強いることなく、実験条件を自由に設定し、繰り返し試行することが可能であるため、本モデルの応用として、大きな有効性が期待できる分野である。人体モデルによるシミュレーションを実現するためには、人体の組織構造をCT装置などにより抽出する人体計測技術、人体の各組織の物理特性を表現できるモデル化技術、シミュレーション結果を明瞭に表示するための可視化技術などが必要であるが、このうち可視化技術に関しては、リアルタイムCGの表示性能が向上したこと、研究に利用可能な画像セットが提供されたことなどにより、人体の組織構造の可視化など、数多くの研究成果が報告されている。また、人体計測技術に関しても、患者に負担のかからない短時間での計測が実現され、計測結果もより高解像度のものが実現されてきている。これらに対して、モデル化技術は目的に応じて必要となる機能を有し、かつコンピュータの処理能力を考慮したモデルを構築する必要があるため、標準となりうる汎用的なモデルを確立するのが難しく、現状ではリアルタイム性を考慮したものとしては質点-ばねモデルや有限要素法などが用いられているが、精度の問題や実装の困難さなどに難点もある。本モデルはこれらのモデルの短所を克服した性能を有しており、本研究によりその有効性が示されたといえる。
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