本研究では、3年に渡りバーチャルリアリティシステムでの利用を前提とした高速シミュレーションが可能な弾性物体モデルの開発を行ってきた。1年目、2年目ではそれらの基本モデルを開発し、その成果を学術論文として発表した。そこでは、ボクセルデータによる自由形状に対する弾性モデルの自動的構築方法と、モデルの弾性運動を実時間でシミュレートする物理法則に基づいた処理アルゴリズムなどの開発を主に行った。また、高速化のために弾性プリミティブの要素数を削減するモデルを考案した。さらに、弾性モデルが切断される場合などに、弾性プリミティブの配置を動的に変更し、高速処理を維持しながらモデルの一貫性を保つためのアルゴリズムも開発した。本年度はそれらに引き続き、プログラムコードの整備やプログラムのWeb上での公開などの整備を主に行った。また、PCのプロセッサの進歩に応じた計算速度の向上を目的とし、各種分散処理や並列処理の効果を調査した。特にPCの拡張命令やマルチCPU、マルチコアプロセッサ処理を調査対象とした。 また、本研究で築いたノウハウを、スポーツ分野への応用研究としてボブスレーのシミュレーション等にも応用し、その成果の研究発表も行った。そこでは、ボブスレー機体の物理運動に対して効率的な計算方法を提案するとともに、ボブスレー機体にかかる反力の効果を高める方法を提案し、検証のための心理的実験も行った。 本研究は3年間という中期的な期間の研究であったが、当初目標としていたテーマ、内容はおおよそ達成できたと考えられる。
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