ユビキタス環境を住宅内で構築するにあたり、屋内の他の場所と全く違う条件である浴室に対して研究を行っている。そして、浴室内でも浴槽のお湯に浸かってない状態での行動(身体や頭髪を洗う、シャワーを浴びる等)をセンシングしてその情報を、サウンドなどの他のメディアで表現することを目的としている。 本年度は、実験室にユニット型システムバス一式を設置し、浴室内で行動計測できる環境の構築を行った。裸の状態であることから行動計測にはカメラ画像は不適切であり、加速度センサなど電気的な設備を直接身体に取り付けることも難しい。そこで、人間の動きを直接計るのではなく、行動に伴って利用される物品の動きを計ることとした。具体的には浴室にある洗面器やシャンプー、石鹸皿、椅子、シャワーヘッド等にRFIDタグを取り付け、浴室の壁の外側や床下などにRFIDのリーダ・アンテナを設置することで、電気的な問題が起こりにくい行動計測環境を構築した。ここでは、浴室内の物品が設置される場所近辺にRFIDリーダのアンテナを複数設置し、各リーダ同士が干渉せず適切に物品の位置が把握できるよう、設置箇所やアンテナの形状・大きさを試行錯誤を重ねて調整した。また複数のRFIDリーダを協調動作させるためのソフトウェア開発も行った。その結果、リーダ(アンテナ)の設置は、シャワーフック(上下2カ所)の壁の裏2カ所、カランのある洗面台(エプロン台)の下1カ所、椅子が置かれる付近の床下1カ所の合計4カ所に設置することで、浴室内物品の位置や動きが計測できるようになった。また予備実験によって、シャワーや身体を洗う動作に伴う物品の動きが適切に計測できることも確認した。今後は被験者を増やして行動計測実験をすることで動作計測の定性的評価を行い、行動の情報をマルチメディアで表現したり、ネットワークで伝達する機能を実現していく予定である。
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