本研究では、数値シミュレーションと高速ネットワーク・VR技術を有機的に結合し、統合的な数値シミュレーション環境を構築することを目的とする。昨年度は主にリアルタイムシミュレーション環境の基盤構築を行ったのに引き続き、本年度は大規模データ送受信時に起こるデータ遅延への対策および、遠隔地とのネットワーク接続に主眼を置き研究を進めた。 大規模な数値シミュレーションから生み出される大規模データをそのままネットワークに流し、さらにはそのデータをリアルタイムで可視化することは、ネットワークに大きな負荷をかけるとともに、受信部である可視化側でも大きな負荷となる。そこで、本年は簡単な圧縮機能を統合環境に組み込んだ。圧縮手法は様々な方法が提案されているが、本研究では、対象が数値データであり、データ形式が限定されていること。また、可視化用データは生の数値データほど高精度である必要性は低いことからデータの低精度化を行うことで、効率的に圧縮が可能となる。一例としては、倍精度実数形式のデータを整数で表現できるようnormalizeし、整数型のデータとして扱う。このことにより、倍精度実数を送信した場合と比較して、約1/4の通信コストで通信が可能となる。このような簡単な圧縮パターンを様々用意し(倍精度-単精度、単精度-倍精度等)、ユーザーの使いたい圧縮方法を選択可能とした。次に遠隔地のユーザーとVR空間に可視化されたシミュレーション結果を共有し、議論しながらシミュレーションを進めることを可能する環境構築を行った。今年度までの研究で、遠隔地にいるユーザーとデータおよびそれぞれの操作方法の共有を可能とした。
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