研究課題
本研究の目的は事例に基づく識別技術の基盤である「最近傍識別器」を高速化するとともに、コンピュータビジョンをはじめとする実用分野への応用の可能性を広げることである。初年度である今年度は、基礎となる最近傍識別アルゴリズムについて、20次元までの特徴空間までに対して高速化、省メモリ化を実現する「K-D Decision Treeアルゴリズム」を提案した。この技術により、従来の技術に対して最大で約400倍程度の高速化を実現した。また、画像中の各画素の色を3次元で表現し、画素ごとに高速に識別することによって、カラーターゲット検出を実時間で実現し、さらに入力画像と背景画像の色を合わせた6次元の特徴を識別することで、ターゲット検出を高性能化する方法を提案した。また、領域単位の識別を実時間で行う「4分木表現を用いた高速領域識別」を提案し、画素単位、領域単位の識別を実時間で行う応用を示した。来年度以降は、さらにコンピュータビジョンの一般的な応用に必要は数百次元から数万次元の特徴に対する最近傍識別器の高速化技術を開発し、顔認識、物体認識、追跡、動作認識などのより実用的、現代的な応用分野への適用を行っていく予定である。また、テキストマイニングや、ロボット制御など、ほかの分野への最近傍識別器の応用についても検討していく予定である。テキストマイニングの分野では、大量のテキストデータからの情報検索や迷惑メイルの検出など、問題がより複雑化しているため、近年高度な識別技術が求められている分野であり、本研究テーマで開発している高速、高性能な最近傍識別器を適用することができれば、実社会への貢献も大きいと考えられる。また、ロボット制御の分野では、近年工業用のロボットから、日常の中で人間とインタラクションを行うロボットへと応用分野が移行しつつあり、日常環境の中での認識技術が重要となっている。日常環境では、開発時に予測できない環境での認識や、環境の変動などが数多く存在するため、環境に柔軟に適応できる認識技術の開発する。この点において、本研究テーマの「最近傍識別器」をはじめとする事例に基づく識別技術は、適応的に事例を学習することで、これらの問題の解決に役立つと考えられる。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
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