研究概要 |
本研究は,重要な設計知識の一つとして認識されつつも一般には広く利用されていない設計意図について,計算可能な設計意図表現により,ユーザに設計意図を記述することによる短期的なメリットを提供し,設計意図の獲得・利用を促す枠組みの実現を目指すものである. 2年計画の初年度にあたる平成16年度は,下記の項目を実施した. 1.論争の枠組みに基づく設計意図表現の検討 システム工学におけるシステム設計評価の考え方を取り入れて,設計意図表現の基礎となる設計プロセスを同定した.その中で同定された設計案,設計基準,TPM(性能測定)等の要素およびそれらの間の関係を,Sartorによる論争の枠組みの上でArgumentative Design Rationale Framework (ADRF)として定式化した. 2.計算可能な設計意図表現の設計 1で定式化したADRFに基づいて,設計意図表現の骨格を法的推論システムNew HELIC-IIの知識表現言語NHLで記述した.その後,NHLで記述した設計意図について,New HELIC-II上で推論が可能であることを確認した. 3.設計意図への法的推論技術の適用可能性の検討 1,2の検討を元に,人工衛星のコンポーネントの一つであるスタートラッカの設計を例題に設計意図を記述し,New HELIC-IIの論証生成機能を用いて,設計におけるトレードオフ関係の表現が可能であることを確認した. 4.設計意図獲得を支援するシステムの検討・試作 本研究で検討した計算可能な設計意図表現の有効性の検証を目的として,大規模複雑システムの開発プロジェクトにおけるシステムの設計に関する情報を蓄積・管理するプロジェクトメモリーシステムと計算可能な設計意図表現を組み合わせた設計意図獲得支援システムの構想を検討し,その一部をプロトタイプとして試作した.平成17年度はプロトタイプシステムに逐次改修を加えつつ,システムによる提案手法の評価を進める予定である.
|