研究概要 |
セル生産システムにおいて作業者を情報面,物理面の両方から支援する"Attentive Workbench(AWB)"の構成要素である自走式トレイ群は,人間作業者への物理的支援の中心となるもので,作業台の上を移動して,部品の受け渡しや,製品の搬送などを行う.またトレイ1台では搬送不可能な大きさの部品や製品については、複数のトレイが協調して大きな形態を生成し,1枚のトレイのように振舞うことで搬送を行う.この形態生成のためには,多数のトレイの中から暇なトレイ(搬送物を載せていないトレイ)を選び,各位置にトレイを移動・整列させることが必要である.このとき,(1)どのトレイを選択するか,および(2)選択した個々のトレイを目標形態内のどこに移動させるか,の2つを決定する必要がある.上記2項目の与え方によってはトレイの移動所要時間が増大してしまうが,可能な組み合わせは極めて多いため,全ての可能性を調べて最適解を求めることは計算量の観点から現実的ではない. そこで本研究では,使用するトレイの選択および各トレイの目的地の決定に発見的な手法を導入した.具体的には,まず目標形態を構成する各目的地に対して優先度を設ける.そして優先度の高い目的地から順に各目的地に最も近いトレイを対応させ,トレイの経路を生成する.シミュレーションを行い,提案手法によりトレイの経路を決める場合,および使用するトレイをランダムに選択する場合のそれぞれについてトレイの移動所要時間を求め,下界値(最短所要時間より小さい値で,その下界より少ない時間ではトレイを整列することが不可能なことが明らかな値)と比較した.トレイをランダムに選択した場合は下界値の2.5〜2.8倍程度の時間を要したが,提案手法は下界値の1.3〜1.4倍程度の時間で目標形態が達成でき,有効性が確認できた.
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