研究概要 |
本研究課題の目的は,「話し方のうまさ」の共通基盤となる「相手が聞き取りやすい正しい日本語で発声する技能」を誰もが気軽に修得できるボイストレーニングシステムの構築である.(1)鼻濁音や母音の無声化といった日本語発声の基本学習項目について,音声分析技術を用いて学習者の発声を分析し,習熟度を自動判定して適切なフィードバックを与えるようなインタラクティブ学習と,(2)一流のボイストレーニング講師による指導を収録したデータを基に生成した,話し方習得のための練習方法やノウハウのマルチモーダルコンテンツによるオンデマンド学習の実現が主眼である. (1)のインタラクティブ学習について,鼻濁音と母音の無声化の習熟度を自動判定する手法を提案し,その有効性を確認した、鼻濁音については,子音と母音のパワー比や平均振幅比など計5種類のパラメータを用いて濁音との識別を行う手法を開発した.被験者実験により,提案手法による判定結果と講師の聴取による判定結果を比較したところ,76%のテストデータに対して正しい判定が可能であったことを示した.母音の無声化については,HMMによる音素認識のスコアを用いて有声と無声を識別する手法を開発した.鼻濁音の場合と同様の実験を行い,提案手法により74%のテストデータが正しく識別できたことを示した. また(2)のオンデマンド学習の実現へ向けて,マルチモーダルコンテンツのプロトタイプも構築した.現役のボイストレーニング講師を招き,生のボイストレーニングレッスンの模様を約12時間分収録した.正しい姿勢と呼吸法・発声法,鼻濁音,母音の無声化,ラ行の練習,アクセント,フレージングといった学習項目別コンテンツを作成した.被験者実験による主観評価を通して,わかり易さ・見易さ・有益さといった観点から,作成したコンテンツの有効性を確認した.
|