研究概要 |
移動体追跡や3次元幾何モデリングで用いられるLevel Set Methodは,曲面の分裂や結合など位相変化への対応が容易であるという,Snakesなどの従来の動的輪郭モデルと比較して優れた特徴を有する.しかし,この手法は初期化や更新時の計算コストが高く,リアルタイム性が要求されるアプリケーションには不向きであると考えられてきた.これに対し,我々はこれまでに高速で安定なLevel Set Methodの実現方法としてFLSM(Fast Level Set Method)を提案し,ビデオ画像上での複数移動物体の実時間追跡実験を行ってきた.本研究はこれを3次元空間におけるトラッキング問題へ拡張し,隠れに頑強な実時間3次元モーションスキャナシステムを構築することを目的とする.本年度は,複数台のステレオカメラとPCクラスタを用いた3次元FLSMモーションスキャナシステムを構築した.本システムを用いた人体概形の実時間追跡実験を行った結果,ボクセル空間の解像度が100×100×100(ボクセルの一辺は1.2cm)の場合,ステレオカメラから距離画像を取得した後,複数距離画像の統合処理が31ms,FLSMの計算は67msであった.一方,PCが1台ではFLSMの計算時間は220msであったことから,PCクラスタを用いた並列計算により,詳細な人体の3次元形状をより高速に復元できることが確認できた.しかし各計算機間での通信時間は最大69msであり,PCクラスタ間の通信時間が全体の処理時間低下の主な要因であることが明らかとなったことから,Myricom社製Myrinetを用いた高速通信ネットワークを新たに導入し,実験を行う予定である.
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