近赤外光脳機能計測装置(NIRS)によって運動想像時の脳活動変化を検出し機器を制御するBrain-Computer Interface(BCI)の開発を目的として、掌握運動想像時の脳活動計測データ特性を分析し、BCIとしての利用可能性を検討した。まず、NIRSによる計測データのノイズ軽減策として、複数のチャンネルで計測したデータの加算によってノイズを軽減し、スムージング処理により生じる時間遅れの問題を解消することを試みた。NIRSの隣接するチャンネルは3cmの間隔で設置されているため、チャンネル毎で異なる脳活動変化が計測されることが予想される。実験の結果、運動野周辺の脳活動計測においては、隣接4チャンネルの脳活動に大きな差はなく、単純加算しても意思判別上問題なく利用できることがわかった。また、計測されるOxy-HbやDeoxy-Hbに比べて、その和であるTotal-Hb量がNIRSの計測アルゴリズム上、ノイズが少なく、BCIの信号として適していることがわかった。つぎに掌握運動想像時の運動野周辺の脳活動変化より、左と右の2種類の意思判別を試み、約80%の成功率で判別が可能であることが示せた。また、NIRSの計測用ホルダの装着における毛髪除去の手間を軽減するため、装着時に自動的に毛髪が除去される計測プローブの構造を考案した。実験によって、計測者が毛髪除去を行わなくとも、計測プローブを装着するだけで毛髪が除去され、計測値にも問題が生じないことが確認できた。
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