本研究は、シベリアで毎年発生している大規模な森林火災の延焼予測シミュレーションシステムを開発することである。初年度である本年は、まずシミュレーションプログラムの構築に関してこれまで開発したプログラムの精度を検証した。その結果、実用的で高精度な予測を行うためには、より高精細度な地形データおよび植生情報が必要であることが判明した。シミュレーションにはセルオートマトン法を用いるが、この方法は、解析領域を格子状に分割し、分割されたセル一つ一つに情報(植生・地形データ)を持たせる必要がある。そのため、シミュレーションの精度を上げるためにはひとつのセルに対応する実面積を小さくする必要がある。現在のシミュレーションプログラムでは、1km四方を1セルとして解析を行っているがこれをさらに小さくする必要があり、それによりセル数が膨大になるため単独の計算機では解析に非常に時間がかかるようになる。そこで、並列計算によるシミュレーションの高速化の検討を行った。具体的にはMPI(Message Passing Interface)等の並列計算ライブラリーの比較検討、コンパイラの違いによる計算速度の比較等を行った。また、国内外の数値シミュレーションの専門家との意見交換も行った。その結果、MPIを用いてクラスター計算機で解析を行う方法を採用することにした。現在、衛星画像を取り込むプログラム部分の並列処理化のプログラムを開発中である。また、プログラム上で延焼計算には擬似乱数を多用しているが、この乱数生成速度が計算速度に与える影響が大きい。そこで、各種擬似乱数生成方法の比較検討を行った。その結果、MT法は非常に質がよく、生成速度の面においても、コンパイラ付属の擬似乱数とほぼ遜色が無いことが確認できた。
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