研究概要 |
本研究は織物の視覚的な風合い評価を目的として,昨年度までに,表面特性(織組織,染色・仕上げ加工工程)の異なる8種類の織物を試作し,3次元変角光度計を用いて布地表面の光反射特性を測定した.さらにこれらの試料を用いて専門検査員(染色・仕上工程における検反作業の熟練者,生地の品質管理に携わる熟練者)8名による視覚的風合いの官能検査をおこなった.試料は,色彩の影響を除くために,無彩色のブラックフォーマルスーツ生地を用いた.そこで本年度は,以下の3点について検討を行った. (1)ブラックフォーマル生地に求められる重要な要素として光沢に着目し,専門検査員が感じる光沢感と生地表面の反射特性の関係について分析を行った.その結果,布を水平面上で360°回転させた際の拡散反射光の積分値に対する正反射光の積分値(以下,正/拡散反射割合という)と光沢感に関する評価値との間に高い相関が得られることから,正/拡散反射割合が布地の光沢感評価指標として有効であることが示唆された. (2)糸の撚りが布地表面の光反射に与える影響を検討するため、上撚りと下撚りの方向を,SとZ方向に変化させ,かつ撚り係数を変化させた双糸を用いてブラックフォーマル用生地の試作を行った.本試料を用いて次年度に布地表面の光反射特性の測定および専門検査員による官能検査を実施する予定である. (3)3次元変角光度計の受光素子にCCD画像センサを用いることにより,布地表面を微小領域に分轄して光反射特性を測定することができる装置の試作を行った.装置は次年度の初旬に試作を終える予定である.実験計画では,現在測定を行っている3次元変角光度計の受光部のみを改良する予定であったが,受光部の機構的な問題により,別途試作を行うこととした.
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