相関ノイズを導入すると、相関によりサンプル依存性が発生する。また、すぐに解へ収束するのではなく、一定の分布を持ち続ける。これにより、解の周辺を有限の確率で探索することになり、より適切な解への収束が見込まれる。今年度は、相関ノイズの役割を検討するために、連想記憶モデルのダイナミクスとCDMAの復調ダイナミクスを解析した。連想記憶モデルはランダムなパターンをアトラクタとして埋め込むことが容易であり、アトラクタ間の状態遷移を解析することができる。相関ノイズによるアトラクタ間の遷移とカオス的な遷移を比較するために、カオス的な振る舞いを理論的に解析した。アトラクタの変化を調べるために分岐図を構成した。 次に、CDMAでは双安定な領域において、いくつかのダイナミクスを検討し、その復調性能を評価した。通常のマルチユーザ復調では、ダイナミクスの違いにより性能に差がでることがわかった。また、良い解(アトラクタ)へ収束せず、悪い解へ収束していることが確認できた。相関ノイズを導入し、アトラクタ間の遷移が可能であるかを今後も検討したい。 さらに、最適化問題の一例である巡回セールスマン問題に、相関ノイズを導入し、最適解の出現頻度を解析した。相関の無いランダムなノイズは熱ノイズとみなせ、シミュレーテッド・アニーリング(SA)に対応する。SAと提案手法を比較した結果、現在のところ、規模の小さい場合であるが、良い結果が出始めている。規模が大きな場合については、まだ解析していない。引き続き相関ノイズの入れ方やクーリング方法などを検討する。
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