研究概要 |
本年度は,自己組織化マップにカーネル法と部分空間法を適用して,従来の自己組織化マップと比較して,データの情報を正確に表現可能な手法について,また,各データに重要度が付加された場合の自己組織化マップの学習則について研究を行った. カーネル法では,カーネル関数と呼ばれる関数を用いて,パターン空間をより高次の空間内で再表現する.これにより元々の空間では分類できなかったパターン集合が,再表現された空間では分類可能なものとなる.また,部分空間法では,代表ベクトルの代わりに複数の基底ベクトルで張られる部分空間を利用することにより,パターンの変形に頑健な分類を実現する.カーネル法と部分空間法を融合することで元々の空間における非線形な部分空間が形成できる.実問題では,同じクラスに属するデータの分布が,線形部分空間上に分布することは少なく,非線形な部分空間手法は非常に有効である.さらに,本研究では,自己組織化マップのアルゴリズムに非線形部分空間を適用することで,外部からの特別な教師信号なしで,パターン集合を表現する非線形部分空間が形成される.提案手法を,異なる向きから撮影された顔画像認識問題へ適用し,従来の線形部分空間を有する自己組織化マップと比較して,認識性能の向上が実現できた.また,各データの重要度が異なる際に,その重要度を利用して学習を行う手法を提案した.そのバッチ型学習アルゴリズムを定式化することで,学習の安定性の向上が実現できた. 提案する非線形部分空間自己組織化マップを時空間パターンへ適用するために,フィードバック自己組織化マップと融合する基礎研究を行った.また,フィードバック自己組織化マップの改良版として,過去の入力情報を保存する新しい層を追加したものを提案した.簡単なジェスチャー問題へ適用して,頑健な時空間認識器の可能性を示した.
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