研究概要 |
本研究は,動的な制約およびあいまいな制約を取り扱えるように発展させた計算モデルを開発し,現実の応用への適用可能性を高めようとするのが目的である.種々の条件を厳格にするとシステム全体としての整合性を満たす解が存在しなかったり,存在したとしても発見するのに大量の計算時間を要したりする場合,モデルにあいまい性を取り入れることにより,この困難を緩和することができ,現実的なシステムの構築が可能となる.本研究は新しい観点から分散制約充足系を拡張して問題を形式化し,それを取り扱うエージェントのアルゴリズムを設計し,現実の計算機ネットワーク上で稼動するソフトウェアとして実装する. 本研究は,「問題の形式化」,「アルゴリズム」,「応用」,「実装および評価」の4段階のステップを踏みながら実施する.本年度は「問題の定式化」と「アルゴリズム」について研究を行った. 1問題の形式化 分散制約充足問題を拡張し,動的かつあいまいな制約を取り入れた数学モデルで表現した.動的な問題は一連の静的な問題の列とみなされ,隣接した問題間の距離を最小化する意味で安定性を議論した.特に,具体的な問題を念頭にして,その距離をできるだけ説得力あるものとして論じた.あいまい性については,制約をファジィ論理あるいはファジィ関係を用いて表現した. 2アルゴリズム 形式化された動的かつあいまいな分散制約充足問題をエージェント群が協調しながら解くためのアルゴリズムを設計した.アルゴリズムは,個々のエージェントが単一ホストコンピュータ内でローカルに実行する計算手順と,エージェント同士が通信するための規約(プロトコル)との2つからなる.基本的には,局所修正アルゴリズムと呼ばれるクラスの研究成果をベースに,特に,ファジィ性を利用して解の安定性をいかに高められるかを検討した. 本研究の研究成果を国際会議において公表した.
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