本研究課題では、被験者の背景音楽対する聞こえかた(感性評価)と、それらに対する脳波、眼球運動、脈波、心電位、脈波伝播速度などの生体情報との関係を明確にする。次に獲得した生体情報から被験者の健康・心理状態を分析し、ニューラルネットワークを用いて、背景音楽の感性評価と健康・心理状態の関係を表現するコンピューティショナルモデルを構築する。最終的に、このモデルを使って実際に、安静または軽作業(朝食・洗顔など)時に背景音楽を流し、非拘束状態のユーザーが、その音楽に対する感性評価をグラフィック・ユーザー・インターフェース(GUI)に入力すると、その人の健康状態および心理状態を即時に診断するシステムを構成する。 現段階では、被験者に聞かせる音楽、それらを評価する形容詞対「明るい-暗い」、「安定した-不安定な」などの選定、さらに被験者5人に対する、対象となる音楽を聴取したときの生体情報(脳波10ch、眼球運動2ch、心電位1ch、脈波1ch)の測定、またその際形容詞対を用いた主観的評価のデータの獲得に成功した。現在、主観評価と生体情報の関係を分析中であり、そのモデルの構築を手がけている。 また、同時に背景音楽だけではなく、香り(アロマセラピーに用いる精油)に対してもモデル化の検討をおこない、アロマセラピストの感性をコンピュータ上にモデル化できることを確認している。(文献1)さらにニューラルネットワークを用いて人間の明順応のモデル化にも成功(文献2)していることから、平成17年度において、生体情報と主観評価の関係を、ニューラルネットワークを用いてモデル化できると考える。また、被験者に合う香りを提案するインターフェースを構築している(文献3)ことから、研究最終年度において、ユーザーが背景音楽に対し評価を入力すると、その人の健康・心理状態を診断するシステムが完成する状態である。
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