(1)超広帯域感性音響収集のための録音システムの構築 人間の心身の快適性を高める超広帯域感性音響は、周波数分布の上限が音全体の平均値で50kHz以上、瞬間的には100kHzに及ぶとともに、数ミリ秒以下の時間領域で複雑に変化する非定常なゆらぎをともなう必要があることが、先行研究により示されている。こうした音源を高忠実度で記録するための超広帯域録音システムを構築した。現有の高速標本化1ビット量子化方式によるディジタル・レコーダを中心に、最新のマイクロフォンやマイクロフォン・アンプリファイアを導入することにより、100kHz超の良好な記録再生周波数特性を有するマルチ・チャンネル超広帯域録音システムを構築することができた。 (2)感性音響のマルチ・チャンネル超広帯域録音 (1)で述べた諸条件を満たす感性音響の最有力候補のひとつに、人類が誕生した環境といわれる熱帯雨林の環境音を挙げることができる。そこで、動植物の固有種が多く棲息し、多様性に富んだ独自の生態系を有するボルネオ島の熱帯雨林におもむき、中でも環境音が美しいことで知られるダナム・ヴァレーにおいて、(1)で構築した録音システムを用いた超広帯域ディジタル録音を行い、良好な特性をもつマルチ・チャンネル超広帯域感性音響記録物を得た。また、ボルネオ熱帯雨林の管理の第一人者であるサバ財団のWAIDI SINUM博士との面談を通じて、来年度以降の本研究への協力要請を行うと同時に、来年度のフィールド録音について有用な助言を得ることができた。
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