本年は、基本的な資料と文献の収集(「CATV now」や「CATVジャーナル」他)、西会津町ケーブルテレビへの聞き取り調査などを行った。その結果、以下のことが明らかになった。まず、ケーブルTVの自主制作番組には、以前からコミュニティ・ジャーナリズムとしての機能が期待されてきた。しかし、小さな範囲とはいえ、放送の公共性に対する配慮からくる自主規制が強い場合、新たな地域問題の発見や提起、地域社会の多面的な分析を含んだ番組作りにまではなかなか至りにくい。特に、自治体の関わりが深いケーブルTVの場合、その傾向が強いように思われる。また、自主規制の意識がそれほど強くない場合でも、現実的な問題がネックになっている。つまり、多くのケーブルTVが、番組製作に関わる人員的な余裕に乏しい。また、ジャーナリズムの機能を果たすには様々な物事を問題化するための知識と能力が必要とされるが、そこまでの基盤を育てることが難しいという事情もある(地方TV局でさえ十分ではない)。しかし、他方で、地域社会の出来事を細かく提供する機能を果たしている部分は大きい。特に、ケーブルTVが設置されている地域にゆるやかな人間のつながりが形成されている場合、自主制作番組の制作過程に住民の参加が生まれやすく、そのようなケーブルTVを囲むネットワークなどから様々な情報や映像が現場にもたらされる。その結果、製作された番組は、普段はなかなか目にふれることのない地域社会の様々な姿を、地域住民に対して提供するものになっている。なお、放送のデジタル化という流れの中で、今後の方向性を模索している地方TV局が、ケーブルTV的なスタンスで地域情報番組を制作するケースが見受けられる。このようなことをふまえ、次年度以降、ケーブルTVの自主制作番組の特性について、地方TV局との比較もまじえながら研究を深めるつもりである。
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