本年度は、基本的な資料と文献の収集に加え、西会津町ケーブルテレビ、たじまケーブルビジョン、舘岩村ケーブルテレビ、嶺南ケーブルネットワーク、70年代に県南放送協会という民間のケーブルテレビが存在した福島県石川町において調査を行った。その結果、以下のことが明らかになった。まず、住民における地域イメージの形成に関して、特に合併して出来上がった自治体などでは、同じ自治体であるにもかかわらず、近隣の集落や自治区をこえた場所の様子を知る機会が少ない場合がある。そのような場合に、ケーブルテレビの自主制作番組は、普段慣れ親しんでいる領域の外に様々な人間・歴史・地域資源などが存在していることを住民が知る機会を提供しており、住民の地域イメージを豊かにしている。また、これとは反対に、ケーブルテレビの自主制作番組は、住民が普段暮らしている集落や自治区などに対するアイデンティティを深める機能も果たしている。普段慣れ親しんでいる集落や近隣の映像が流されることを楽しみにしている住民も少なくない。このように、日常的に親しんでいる領域をこえた地域イメージをもたらす部分と、自治体の中に分散している多様な生活領域への所属意識やイメージを強化する二つの方向性が存在する。なお、放送される内容に関しては、事件や事故などは扱いにくい。また、ニュースの解釈などのジャーナリズム機能を十分に果たすのは困難である場合が多い。ただ、地方テレビ局の番組に比べて、ケーブルテレビ局の自主制作番組には、時間的な制約が少ない。あるニュースを編集し解説するのは難しいが、例えばある記者会見などをそのまま編集なしで放送できてしまう。その上で、解釈は視聴者に委ねるということも可能である。
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