理論的研究面では、コミュニティ・インフォマティックス(CI)へのアプローチ方法を探るため、CIを題目とする文献のレビューを行った。また、コミュニティ開発における中心課題を、地域社会における「公共」の再構築プロセスであると考え、公共哲学に関する文献レビューも行った。これらの文献レビューと通じて、コミュニティ開発のためのフレームワークと、コミュニティ開発過程における情報通信技術の有効性に関する仮説構築を進めた。 さらに、二箇所での国内調査を行った。東京都北区では、コミュニティの「公共」の担い手としてNPOや市民ボランティアなどの団体に注目し、聞取り調査を行った。(訪問先:北区地域情報化推進協議会、SPANet、北区ITコミュニケーションズ、北区まちづくり公社、北区NPOぷらざ)北区では住民主導の情報化活動が複数取り組まれており、これらの活動の担い手たちはゆるやかにネットワーク化されている点が特徴的であった。また、住民による協議会が行政と協力して情報化の拠点となる地域情報化推進センターの設置・運営という成果を生み出したり、区内の情報インフラをCATVが協力したりと、行政・民間・市民との協働による情報化推進の姿が見られた。 昔よりボランティア活動が活発な大阪府大阪市では、大阪ボランティア協会や大阪市ボランティア情報センターなど、市民のボランティア活動を支援する中間組織が充実しており、これらの組織を対象に調査を行った。これは大阪市における市民活動および情報化活動の現状を明らかにするためである。さらに大阪府や大阪市の情報化政策に多く関わっている大阪市立大学・中野秀男教授へのインタビューも行い、大阪における主だった情報化プロジェクトについて情報収集を行った。
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