理論的研究面では、昨年度はコミュニティ開発における「公共」の再構築という視点で研究を進めていたが、今年度はより具体的に「公共」の相互行為の行われる行為空間へと焦点を絞ることにした。空間情報を扱うGIS(地理情報システム)と、人文地理学において蓄積されてきた空間論とを接合し、GISを使用したコミュニティ開発プロジェクトを調査対象に据えて、コミュニティ・インフォマティックス(CI)研究の仮説構築に向けた研究を進めた。 今年度は予定通り海外調査を計画し、平成18年1月に米国カリフォルニア州ロサンゼルスおよびワシントン州シアトル市の二都市で現地調査を実施。主にGISを利用したコミュニティプロジェクト関係者への聞き取り調査を行った。ロサンゼルス市における調査は、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校・近隣知識センターが関わる複数のコミュニティGISプロジェクトについて直接関係者へ聞き取りを行った。シアトル市では、市情報技術局担当者の協力の下、インターナショナル地区で展開されたWILDプロジェクト関係者を中心に聞き取りをし、GISを活用したコミュニティ開発実践の詳細や効果について聞き取りを行った。 また、国内においても追加調査を平成18年2月に実施し、兵庫県西宮市および山口県萩市におけるプロジェクト関係者へ聞き取り調査を行った。西宮市では、市が構築したGISを利用した市内情報データベース「道知る兵衛」や、健康のためのウォーキングルートやバリアフリー情報などを盛り込んだルート検索サービス「ちずナビ隊」について開発責任者から話を聞いた。萩市では、萩博物館を中心に進められている地域の歴史的遺産や街の象徴などを地図上で展開させたHAGISという地図情報システムについて、担当者に話を聞いた。
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