本研究は世界の将棋類とその変種において、計算機プログラムによる自動プレイを通じて大量の対戦を行って採取したデータから、各変種間の質的類似度の評価を行うこと及び、その実験を簡便に行うための自動化されたシステム構築を目的としている。 本年度は以下のような進展があった。 まず日本将棋とその変種に対する計算機実験をさらに進めた。現代将棋に直接つながるいわゆる「小将棋」と呼ばれるグループとは別に、「中将棋」という変種に代表される、大きな盤で多数の駒種を持つグループの変種に対する自動学習および自動プレイ計算機実験を行った。現在、実験結果の分析中である。中将棋には現代将棋にはない特殊ルールがいくつか存在するが、特にそれらの特殊ルールに着目した。これらのルールがある場合と無い場合に分けてそれぞれ実験を行い、これらのルールの有無によってゲームのデータがどのように変化するか、すなわちゲームの質にどのような影響を与えているかという点に注目して評価を進めている。 この他、将棋の桂馬の動きを八方桂(チェスのナイト)に変更するといった、現代将棋の変則ルールに対する計算機実験も行った。その結果、八方桂ルールは、大駒が加わることと同程度に大きな影響を与えるルール変更であることが示唆されている。 次に、海外の将棋類の歴史的変種に関する調査では、主に象棋(中国将棋)の歴史的変種のルールに関して現地の文献等から調査を進めた。調査したいくつかの象棋の中で北宋時代に存在したと考えられる歴史的変種について、現在計算機実験を行う準備中である。 最後に、自動実験システム構築に向けた計算機実験プログラムの改良については、多数の変種に対する実験を容易に行うことが可能となるように、各変種のルールを柔軟に設定する操作を行う機能を実装中である。また前年度にひき続き、各変種における実験の計算コードの共通化も進めている。
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