平成16年度は、共感覚メタファーのうち、視覚から他の感覚(心的状態を含む)への写像に基づく、「色彩を表す形容詞+抽象名詞」という共起関係によって形成される色彩語メタファーについて、ドイツ語の文学作品の事例分析及びWebから任意に収集した日本語の色彩語メタファーのデータをもとにした心理実験による表現効果分析を行った。その結果、色彩語メタファーでは、色彩を表す形容詞単独が喚起するイメージとは異なるイメージ、とりわけ否定的なイメージが喚起される傾向が確認された。 平成17年度は、上記平成16年度の研究成果を踏まえ、交付申請書記載の研究手順により、色彩語メタファーの表現効果喚起メカニズムについて解明を進めた。 手順(1).平成16年度に収集したデータに追加して、日本語の文学作品コーパスより色彩語メタファーおよび関連する表現の収集を行った。さらに、Webからより大規模に日本語の色彩語メタファーと関連する表現の収集を行った。収集されたデータを複数のタイプに分類し分析を行った。 手順(2).手順(1)により日本語の文学作品コーパスから収集された色彩語メタファーに基づき、表現効果について仮説を立てた。 手順(3).手順(1)によりWebから大規模に収集された日本語の色彩語メタファーを用いて、手順(2)によって立てられた仮説を検証するため、心理実験を行った。 手順(4).手順(1)から(3)の結果とドイツ語の文学作品データの分析結果の比較により、色彩語メタファーに見られる表現効果に普遍性があることを確認した。
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