平成16年度ではモーフィングを用いて、より感情表出強度の低い表情刺激を用いて、表情認知構造内部のフラクタル性を科学的に明らかにした。当該研究は海外の専門誌"Cognition and Emotion"に投稿し、Editorの指示により現在revisionを投稿中である。平成17年度は倒立表情画像および日本人以外の他人種の表情画像を使用して、正立表情よりも倒立表情のほうが表情認知構造のフラクタル次元が高く、また自人種表情よりも他人種表情のほうがフラクタル次元が高くなることを実証することを目的として一連の実験を行なった。実験の具体的な内容は、まず被験者に提示する感情的表情表出は喜び・悲しみ・怒り・恐怖・嫌悪・驚きの基本6表情と、それらを円環状に配置して隣り合う表情同士をモーフィング処理した合成表情であった。要因は、日本人による表情表出(自人種条件)とアメリカ人による表情表出(他人種条件)の両方を設定し、さらにそれらを正立で提示する条件と倒立で提示する条件を設定するという2要因であった。コンピュータ画面上で基本表情と合成表情を被験者にランダムな順に提示して評定尺度法を用いて評定させ、得られたデータを各条件において多次元尺度構成法(MDS)によって分析した。さらに、MDSの結果からフラクタル次元を算出して条件間の差を検証した。その結果、他人種の倒立条件が最もフラクタル次元が高いことが判明し、複雑さという観点からこれまでの研究結果を支持した。本年度の研究結果は、American Psychological Association 113^<th> Annual Conventionにおいて発表し、大きな反響を呼んだ。また、現在論文化作業を完成させ、英文校正など投稿準備を行なっている。
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