複数の刺激の中からそのときの状況に応じて必要なものを探し出す視覚探索は、我々や動物の日常生活においても重要な認知機能である。視覚探索を遂行しているときにはボトムアップ性とトップダウン性の2つの注意機構が働いていると考えられているが、この注意メカニズムの神経機構はまだよくわかっていない。このことを調べるため、サルに視覚探索課題を訓練させ、課題を遂行しているサルのV4野からニューロン活動を記録し、解析した。 実験で用いた多次元視覚探索課題では、各試行において6個の刺激配列が呈示され、その中には、色次元で異なる刺激と形次元で異なる刺激が1つずつ含まれる。目標刺激を探すためのルールは2つあり、形次元探索ルールのときは形次元で異なる刺激を、色次元探索ルールのときは色次元で異なる刺激にサッカードを行うと報酬がもらえる。この課題を遂行にあたっては、ボトムアップ性注意による信号(どちらの次元で目立つ刺激であるか)とトップダウン性注意による信号(どちらの次元で探索するか)を組み合わせて、目標信号(どの刺激が目標であるか)を脳内で生成する必要がある。 得られたニューロン活動を解析した結果、V4野ではボトムアップ性注意によるニューロン活動の修飾作用がトップダウン性注意によってさらに制御されていることを明らかにされた。また、従来から知られていた特定の空間位置対する注意や赤、丸型などの特定の刺激特徴に対する注意(空間や刺激特徴に対する注意)とは別に、特定の特徴次元(色や形)に対する注意機構が存在することを初めて見出した。
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