研究課題
時系列相関がある場合の因果性を、多変量時系列のスペクトル行列に対する一種の制約と解釈し、その制約の良し悪しを判断する基準:Cross Validated Log Likelihood Criterion(CVLL基準)を提案した。CVLL基準とは、尤度を元にモデルの良さを図るもので、パラメトリックモデルのみならず、ノンパラメトリックなモデルにも適用できる点に特徴がある。時系列間の因果性をノンパラメトリックなモデルと解釈し、CVLL基準によって因果性を同定することができたことが本年度の主な成果である。具体的には、因果性をスペクトルのcharacterizationとして定式化し、CVLL基準がcharacterizationの選択に一致性を持つことを一般的に証明した。さらに、CVLL基準で因果性を検出するソフトウェアを作成した。本ソフトにより、多変量時系列を入力することで、因果性の検出結果をグラフィカルに描き出し、因果関係を視覚的に分析することができる。次に、香港の病院における呼吸器系の病気で入院する患者数の日次データと、要因と推定されるSO2、NO2、オゾン、微粒子、気温、湿度の日次データを使って、本ソフトウェアによるCVLL基準による因果性分析のデモンストレーションを行った。その出力結果より、NO2、オゾン、気温が、患者数の直接の要因になっていること、その関係は短期的ではなく、長期的な関係にあること、微粒子、SO2、湿度は、直接要因であるNO2、オゾンの生成の原因となっているため、入院患者数に間接的な要因として働いていることがわかった。そして、いずれの関係も短期的ではなく、これらの要因が数ヶ月間積み重なって、入院患者数にゆっくりと影響するという長期的な関係であることを分析した。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
Research Report 109, Department of Statistics, the London School of Economics and Political Science 109