研究概要 |
平成16年度の研究では,本研究の柱となる有意義な具体的な現象「治癒混合モデル」と「順位検定の背後に現れるあるセミパラメトリックモデル」をトピックとして,主に次のような三つの研究開発を行った.第1の研究では,「治癒混合モデル」の擬似部分尤度からの推測法を提案し,擬似部分尤度から得られる推定量の性質を纏めた.また,擬似部分尤度法から得られるマルティンゲール性質も定式化した.今後に,マルティンゲール性質を利用することにより,推定量の漸近的性質を見通しよく構築でき,さらに診断法の確立も期待できる.第2の研究では,「治癒混合モデル」から得られる二つの推定法「擬似部分尤度法」と「EM型プロフィール尤度接近法」の違いを明らかにするために,この二つの推定法から得られる局外関数の性質を研究調査した.この研究によって,「擬似部分尤度法」からの局外関数は,前進型Volterra積分方程式により導かれ,「EM型プロフィール尤度接近法」からの局外関数は,後退型Volterra積分方程式もしくは本質的にFredholm積分方程式から導かれるという違いを明らかにできた.そして,双方の局外関数に対する漸近的表現を求め,互いに,それが漸近一致性と漸近正規性を得るための条件を導出した.また,この漸近的な結果を確認する目的と有限標本での局外関数の挙動を調査する目的のため,いくつかのシミュレーション研究も行った.ここでの研究は,今後にかけて,「EM型プロフィール尤度接近法」からのマルティンゲール性質を定式化することが可能か否かを追求するための鍵となる研究で,また「擬似部分尤度法」からの大標本理論を補う研究にもなると考えている.第3の研究では,「順位検定の背後に現れるあるセミパラメトリックモデル」の研究に関して,Legendre直交展開により得られるハザード・モデルを研究した.とくに,この直交展開モデルは,様々な対立族に対して,非常に強力な検出力をもたらす順位検定の方法:データ駆動型順位検定法を提供する.このとき,最初に重み付け対数順位検定のLegendre直交展開の方法を開発し,理論的妥当性とシミュレーション結果を纏めた.この研究の中で,データ駆動型順位検定の方法には,さらに「治癒混合モデル」からの接近も可能であり,今後にかけて両者の融合が2標本問題の有用な展開を与えることもわかった.
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