研究概要 |
平成17年度の研究では,本研究の柱となる有意義な具体的な現象「治癒混合モデル」と「順位検定の背後に現れるあるセミパラメトリックモデル」をトピックに,新たに「区間中途打ち切りデータの推測」を加えて,主に次のような三つの研究開発を行った.第1の研究は,「治癒混合モデル」における主要な推測法の一つである「EM型プロフィール尤度接近法」に基づく推定量の漸近性質の研究である.この尤度の凹性を研究し,また,以前よりの懸案であった「EM型プロフィール尤度接近法」からの後退マルティンゲール性質の定式化が可能でないことを明らかにした.その副産物として,時間逆向きのハザード・モデルに基づく「擬似部分尤度法」がマルティンゲール性質を回復することを発見した.このことは,時間順序方向と時間反転方向とのハザード・モデルの特徴が顕著に現れる区間中途打ち切りデータの推測に応用する動機づけを与えた.第2の研究は,このような区間中途打ち切りデータにおける(従来のNPMLEに代わる)新しい推測法として,時間順序方向と時間反転方向とのハザード・モデルに基づくマルティンゲール接近法を定式化することである.現在までに,区間中途打ち切りデータに対する理論的な背景を整理し,時間順序方向と時間反転方向のマルチィンゲール性質を証明した.このエレガントな双子の理論が実際の推定力として,従来のNPMLEと比べてどの程度の性能をもつかの評価の途中である.第3の研究は,「順位検定の背後に現れるあるセミパラメトリックモデル」から自然に導かれるLegendre直交展開に基づくデータ適応型ランク検定法である.とくに,この直交展開において,第0成分を治癒率に,第1成分以上を,例えば,非治癒個体集合に対してWilcoxon型検定を導くようなハザード・モデルを導入することで,自然な「治癒混合モデル」のパラメトリゼイションが可能であることを解明した.とくに,本研究の柱となっている二つのトピックの融合を生み,より有用な2標本検定や多変量解析法を開発するための研究を行っている.
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