研究概要 |
本研究の目的は,毛筆を用いて行書体や草書体などで書かれた続け文字列などを高精度に認識する手法を確立することである.そのため,これまで研究代表者が行なってきた手書き宛名および手書き文字の自動認識に関する研究と,ペン字・書道における文字の美的評価に関する研究の成果を土台として,従来の認識手法とは全く逆のアプローチを検討している.すなわち,あらかじめ用意した個々の文字画像から,続け文字列を自動生成し,文字列同士のパタンマッチにより,認識処理を行おうとするものである.この目的を達成するため本研究では,(1)入力画像に書かれている文字を推定し,(2)限られた文字サンプル画像から(1)で推定した文字列を続け字として措いた場合の文字列画像を自動生成し,(3)生成した文字列画像と入力画像とのパタンマッチを行う,という3つのステップに分けて研究を行っている. これらの研究目的を達成するため,今年度は,昨年度検討した手書き文字列自動生成アルゴリズムに対し,大量のデータを用意して検証実験を行った.しかしながら,従来のような重ね合わせの原理を基盤とした統計的手法に基づくパタンマッチ手法では,特に連綿箇所の差異を原因とする誤認識が非常に多く,これらに対する解決策の検討が必要であることがわかった.この問題点については,本来の文字を構成する黒画素と連綿線などの付随的な黒画素とを区別し,重ね合わせに対する重み付けを行うことにより,解決を検討しており,この研究は来年度に継続してゆく予定である. 本年度は,毛筆による文字列の認識手法として昨年度検討したアルゴリズムを実装し,大量のデータを用いて検証実験を行ったところ,文字の連綿箇所の多様性のために認識率が大幅に低下することが確認され,その解決策を検討したことが主な成果である.次年度は,現在検討中の解決手法の詳細を検討・実装し,研究成果としてまとめて行く予定である.
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