研究概要 |
空間上の疾病や兆候の異常を検出する際に疾病集積性の検定が用いられる。中でも集積の有無の判定と同時に集積地域の同定も行うCluster Detection testは実用上有用である。また最近のバイオテロリズムの脅威から、その兆候を早期に発見することが望まれており、そのサーベイランスの目的で、実際米国ではKulldorffによるSaTScan法を用い毎日の解析が行われている。しかしSaTScan法では集積地域の形状によってはうまく同定できない場合がある。そこで本研究ではSaTScanの平面上での集積地域同定に用いられるcircular scan法を改良する形で、新たにflexible scan法を提案した。この方法では特にSaTScanでは検出しづらい非円形状の集積地域を精確に同定できることをシミュレーションによって確かめた。その際、従来の検出力ではこれらの同定を含む検定法を十分に評価することができないため、新たに同定の精度を詳細に示すことができるbivariate power distributionを提案した。また従来の検出力同様[0,1]上の実数値として検定の力を表すextended powerを提案した。この指標は同定におけるfalse positiveとfalse negativeにそれぞれに重みをつけた幾何平均の形で表わされ、特別の場合として従来の検出力を含んだ形となっている。このextended powerはペナルティーを決める際の重みパラメータに依存して値が変化する関数となってあり、その関数のplotをしたprofileも併せて提案した。これらの評価指標を用いてcircular scan法とflexible scan法の比較を行い、従来の検出力でははかれなかった地域同定を含む検定指標の性能を詳細に表すことができるようになった。
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