研究概要 |
ゲノム上の遺伝子の偏りという観点からゲノム構造の進化を明らかにするために、グラム陽性細菌間でオルソログ遺伝子と必須遺伝子のゲノム上の分布や遺伝子の並びが保存された領域(シンテニー)を比較している。これまでにクロストリジウム属における細菌間(C.perfringens, C.acetobutylicum, C.tetani)でリーディング鎖上に保存された11個の長いシンテニーを見出しており、その中には枯草菌の271個の必須遺伝子から推定したC.perfringensの必須遺伝子の84%が存在していた。シンテニーに含まれていた機能が不明な遺伝子群はクロストリジウム属にとって重要な役割をもつ可能性があると考えられた。さらに、全ゲノム配列が決定された183種の微生物に対して遺伝子のリーディング鎖への偏りを調べるため、累積GC skewにより複製開始位置を予測し、ゲノム配列をリーディングとラギング鎖に分けた。遺伝子の偏りは(リーディング鎖における遺伝子数)÷(ラギング鎖における遺伝子数)により調べた。グラム陰性細菌での偏りは0.96から2.06の範囲と小さかったのに対し、グラム陽性細菌では1.05から6.49と幅広く、Clostridia綱では偏りが3.76から6.49の範囲と最も大きかった。一方、Mollicutes綱のMycoplasma属では、3.72から4.40という偏りが大きいグループ(M. genitalium, M.pneumoniae, M.penetrans, M.gallisepticum)と1.05から2.61という偏りが小さいグループ(M.mycoides, M.mobile, M.hyopneumoniae, M.synoviae, M.capricolum)に分かれていた。高GC量グラム陽性細菌(Actonobacteria)では偏りは1.18から2.97の範囲と小さかった。これらの結果から遺伝子の偏りとGC含量との間には相関が無いことが分かった。今後はClostridia綱とMlollicutes綱に着目しオルソログ遺伝子とシンテニーの比較を行うことにより、偏りが見られる遺伝子の特徴を調べる予定である。
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