平成16年度は、アセチルコリン性入力による嗅球出力細胞(僧帽細胞、房飾細胞)の匂い応答の変化を調べるため、嗅球出力細胞の匂い応答を、アセチルコリンレセプターの非選択的アゴニストであるカルバコール投与前後で比較する実験を行った。実験にはウレタン麻酔下のラット(雄、250-300g、ウィスター種)を用いた。 薬物投与には、細胞へ記録している細胞に効果的に作用させるために記録電極と薬物投与用電極を貼り合わせた電極を作成し、薬物はイオントフォレシス法を用いて局所的に投与した。これまでに7細胞での記録に成功し、 (1)カルバコール投与による自発発火頻度の変化 (2)カルバコール投与による匂い応答強度の変化 (3)カルバコール投与による匂い応答の時間パターンの変化 について解析を行った。その結果、7例中2例で自発発火頻度の上昇、3例で自発発火頻度の減少が観察された。これらの結果は、僧帽細胞と房飾細胞でアセチルコリンの作用が異なることを反映している可能性を示唆している。次に最も強く応答する匂い刺激に対してカルバコール投与の効果を調べたところ、7例中3例で若千の応答強度の増強が観察されたが統計的有意な差ではなかった。最後に匂い応答の持続時間を解析したところ、7例中2例で顕著な応答時間の増強が観察された。これらのプレリミナリーな実験から、カルバコールは嗅球出力細胞の匂い応答の発火頻度より、むしろ応答時間のコントロールに寄与している可能性が示唆された。
|