研究概要 |
本研究は、行動学・神経解剖学・生理学的手法を組み合わせ、道具使用学習前後のadultニホンザルの頭頂葉領域において、1)標識神経軸策の投射・軸策分枝パタンの解析、2)標識神経終末の形態的特徴を比較・検討することにより、学習による大脳皮質内神経回路の再構築を検証し、高次脳機能獲得の為の具体的神経メカニズムの解明を目指すものである。本年度までに以下の実験成果が得られた。 1,道具使用訓練と習熟度の定量化:2週間の道具使用訓練により、全てのadultニホンザルにおいて遠方にあるエサを熊手状の道具を操作し獲得できるよう訓練でき、さらに学習曲線を指標にトレーサー実験で用いる動物脳標本の均質化を図ることができた。 2,標識軸索の光学顕微鏡的解析(トレーサー実験):頭頂間溝前壁部への逆行性標識色素の注入により、道具使用訓練動物では視覚関連領域・前頭前野、などの大脳皮質領域において標識細胞数が増加していることが我々の先行研究により判明している。本年度は、上記1により均質化された動物脳と対照動物脳の視覚関連領域(側頭-頭頂葉連結領域)に順行性標識物質を注入し、頭頂間溝前壁部において標識神経軸策の分布解析、及び単一軸策の分枝構造パタンの再構築を行った。その結果、対照動物では標識軸策は主に頭頂間溝基底部深層に分布していたのに対して、道具使用動物では頭頂間溝全体に広範に分布し、さらに終末分枝が浅層で確認された。次年度も引き続き標識軸策の検索、及び分枝構造パタンの解析を行っていく。 3,標識神経終末の電子顕微鏡的解析:次年度は、上記2によって得られた試料をもとに神経終末の電子顕微鏡的解析を行い、その形態学的特徴を検討していく予定である。
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