多様な個性を持った神経細胞の発生・分化過程を明らかにすることは脳の細胞構築・機能を解明するために重要である。本研究は、神経細胞の発生・分化制御におけるDNA修復の役割を解析することで大脳皮質構築における機能を明らかにする。そこで、神経細胞の発生・分化過程においてDNA修復タンパク質の核内での時空間的な動態を観察するために、DNA修復タンパク質に蛍光タンパク質(GFP)を付加した融合タンパク質を発現するベクターを作製した。DNA修復遺伝子には、これまでのノックアウトマウスの実験結果からDNA polymerase β、Parp-1およびXrcc1を用いた。まず、作製したベクターは初代繊維芽細胞にトランスフェクション試薬を用いて遺伝子導入を行った。数時間〜数日の培養をおこなった後、通常の蛍光顕微鏡での観察を試みた。その結果、予想されたようにGFP融合DNA修復タンパク質は細胞核への局在が観察された。さらに、GFP-XRCC1タンパク質では培養液中にDNA障害剤を添加することでDNA損傷部位と考えられる部位に点状の集積が観察された。これは、すでに報告のあるXRCC1の動態と一致している。そこで、このベクターをin uteroエレクトロポレーション法によって発生過程にある胎児マウス大脳皮質に遺伝子導入をおこなった。その結果、神経前駆細胞から神経細胞への分化過程において異なる核内での局在を示す結果を得た。したがって、大脳皮質構築の初期の過程においてDNA修復タンパク質が機能的に動態変化していることが示唆された。
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