本年度は顕微鏡レーザー描画装置の開発と薄膜材料の検討を行った。 1.顕微鏡レーザー描画装置の開発 倒立型蛍光顕微鏡(オリンパスIX70)を改造し、アルゴンレーザー光(波長514.5nm、光出力150mW)を対物レンズを通して試料面に照射できるようにした。40倍の対物レンズ(オリンパスUAPO340)の場合、約2umのスポットが得られた。透過/蛍光観察をしながら、レーザー光を機械的シャッターによりオンオフを制御可能とした。レーザースポットは、常に視野の中央になるように調整し、試料を手動あるいは電動ステージで移動させるようにした。 2.薄膜材料の選定 薄膜材料にポチメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、サイトップを用い、各々ガラスボトムディシュにスピンコートにより薄膜を形成させた。この薄膜上でラットの神経細胞を培養すると、すべての薄膜上では細胞が接着しない、あるいは接着しにくいことがわかった。これに対して、薄膜上にさらにポリエルエジン(PLL)をコートして細胞を培養した場合、PMMAとPSは細胞が接着するが、サイトップでは細胞が接着しないことがわかった。したがって、PMMAあるいはPS上にPLLコートをした薄膜を用いて以後の研究を進めることにした。薄膜上で神経細胞を培養し、上記描画装置を用いてレーザー光の照射を行った。照射部分のPMMAおよびPSが溶け溝が形成された。神経細胞はこの溝を避けて伸張するものも観察されたが、溝をまたがっているものも多数見られ、まだ完全には伸張方向を制御できてはいない。この他に、水溶液中では薄膜が剥離しやすいという問題が生じた。次年度は、薄膜の厚さやレーザー光のパワーの最適化を行う確実性を向上させる。
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