研究概要 |
dilute-lethalマウス(DL)は、ミオシンVaをコードする遺伝子(Myo5a遺伝子)に変異をもつ運動失調ミュータントで、ヒトのGriscelli症候群のモデルとして知られている。平成16年度はDL小脳におけるプルキンエ細胞数減少の原因の一つとして、胎齢12日におけるプルキンエ細胞前駆細胞のアポトーシスを明らかにした。本年度はDL小脳における出生後の神経細胞死をTUNEL法により調べ、更に、プルキンエ細胞消失と小脳の機能的帯状区画との関連についてZebrin II(機能的帯状区画のマーカー)に対する抗体を用いて免疫組織化学的に検討した。 DL小脳では、生後4〜14日の外顆粒細胞および内顆粒細胞でTUNEL陽性細胞がみられたが、その数は対照マウスとの間に差はなかった。また、生後0〜21日齢の間はDL,対照マウス共にTUNEL陽性プルキンエ細胞は認められなかった。生後21日齢におけるDL小脳の機能的区画を調べたところ、Zebrin II陽性プルキンエ細胞の帯状分布は正常であり、対照マウスとの間に顕著な差を認めなかった。 以上より、DL小脳におけるプルキンエ細胞数の減少は胎齢12日における前駆細胞のアポトーシスに起因し、生後の発達過程ではプルキンエ細胞の消失が起こらないことが明らかになった。更に、プルキンエ細胞の消失は特定の機能的帯状区画では認められなかったことから、特定の運動症状とは関係せず、小脳機能の全体的な低下に関連していることが示唆された。
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