エストロゲンの作用に伴い、脳神経細胞にどのような構造的変化がもたらされ、その結果、どのような機能的変化が生じるのかを、生細胞レベルで明らかにするために、マウスエストロゲン受容体α遺伝子プロモーターの下流にGFPのcDNAを繋いだ遺伝子のTGマウスを作成した。得られたTG系統において視床下部、中隔、分界条床核や扁桃体など、ERαを発現する領域でGFP陽性の神経細胞の分布が確認された。卵巣摘除を行ったTGマウスの脳組織を解析し、卵巣摘除を行うとGFP陽性の細胞が増加する脳領域と変化の見られない領域があり、変化の見られた領域では、神経細胞体が小さくなることを明らかにした。また、GFPの蛍光は神経細胞体のみならず軸索および樹状突起にも分布しており、神経細胞の形態の観察可能であることがわかった。脳切片をERαに対する抗体で蛍光染色し、GFP陽性細胞がERαを発現している細胞であることを確認した。生後数日のTGマウスの脳を取り出し、350μmの脳スライスを作成、コラーゲンコートした多孔質膜上にのせ、膜の下面に培地が接するようにして、37℃、.5%CO2で培養を行い、共焦点レーザースキャン顕微鏡を用いて1日毎に神経の形態を観察した。少なくとも10日は正常な状態で組織を培養し、GFPの蛍光を指標に神経細胞の形態を観察することができた。培養終了後、組織を固定して切片を作製、ニッスル染色を行い、神経細胞が生存していることも確認した。以上の成果を第34回北米神経科学会年会にて発表し注目を得た。
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