研究概要 |
平成16年度は,αシヌクレインのin vitroにおけるユビキチン化について検討した。これまでに研究代表者らはウサギ網状赤血球ライセートによりαシヌクレインをユビキチン化できることを見出した。今回はこの反応条件について検討し,その至適化を行った。得られたユビキチン化αシヌクレインをタンパク質化学的に解析し,そのユビキチン化部位の同定を試みた。その結果,Lys21,23,32および34が主要なユビキチン化部位であることが明らかとなった。またαシヌクレインに存在するリジンをアルギニンに置換した種々の変異体を作製し,ウサギ網状赤血球ライセートによるin vitroユビキチン化アッセイを行ったところ,Lys21および23あるいはLys32および34をアルギニンに置換した変異体αシヌクレインにおいてユビキチン化の顕著な抑制が認められた。この結果は,タンパク質化学的解析で決定できたユビキチン化部位と一致しており,αシヌクレインのin vitroユビキチン化部位が明らかとなった。 シヌクレイノパチー患者脳において蓄積したαシヌクレインの一部はユビキチン化されているが,可溶性αシヌクレインはユビキチン化されていない。したがって,αシヌクレインは線維化したのちにユビキチン化される可能性が考えられるので,予めin vitroで線維化したαシヌクレインがin vitroでユビキチン化できるかどうかについて検討した。10mg/mLのαシヌクレインを37度で4日間振とうしてαシヌクレイン線維を調製した。これをin vitroユビキチン化アッセイ系で反応させると,可溶性αシヌクレインの場合と比較して効率は減少したが,ユビキチン化できることが示された。次いでそのユビキチン化部位について解析したところ,可溶性αシヌクレインのユビキチン化部位とは異なり,Lys6,10および12が主要なユビキチン化部位であることが明らかとなった。線維化αシヌクレインのコア領域が31〜109アミノ酸残基であることを考え合わせると,線維化にともなう構造変化により可溶性αシヌクレインのユビキチン化部位がマスクされる,あるいは立体障害によりユビキチン化酵素群が接近できなくなるなどの理由で,よりN末端側にユビキチン化部位がシフトしたと考えられる。来年度はこれらのユビキチン化部位が実際にin vivoでもユビキチン化されているかどうかについて調べるつもりである。
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