研究概要 |
動物は,視野周辺部に出現した興味ある物体を注視する為,速い眼球運動(サッケード)を行い視標を中心窩に捉え、その後その物体を網膜の中心に固定する(固視)。その際、視野内に現われる他の視標に視線を移動しないように眼球運動の抑制が起こっている。本研究は、この一連の過程に関わる前頭眼野と上丘の固視領域とサッケード発現機構との関係を明らかにすることを目的とする。 今年度は、視覚誘導性と記憶誘導性サッケードを訓練したサルを用いて前頭眼野及びその近傍において微少電流刺激を行い、サッケードの誘発される古典的前頭眼野及びサッケードの発現を抑制する抑制野を明らかにした(JNP,2004I, II)。また、ネコを用いてin vivo急性実験を行い、上丘から水平眼球運動系の抑制性バースト細胞に至る神経回路を同定した。実験は抑制性バースト細胞の細胞内記録を行いながら、上丘の注視関連領域である頭側部及びサッケード関連領域である尾側部の微少電流刺激に対する応答を調べた。さらに脳幹の切断実験と、トレーサー注入による解剖学的方法とを組み合わせて上丘から抑制性バースト細胞への入力経路を同定した。その結果、脳幹の抑制性バースト細胞は対側の上丘尾側部から単シナプス性の興奮性入力、同側の上丘尾側部から対側、抑制性バースト細胞を介する2シナプス性の抑制性入力、そして両側の上丘頭側部から脳幹のポーズニューロンを介する2シナプス性の抑制性入力を受けていることが明らかになった(JNP,2005)。この上丘から脳幹のバースト細胞への抑制性入力は、固視の際のサッケードの抑制に関与していると考えられるので、今後サルを用いた慢性実験で明らかにして行きたいと考えている。
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