研究概要 |
2',5'-オリゴアデニル酸合成酵素(2-5OAS)はウイルス感染時にIFNによって強力に誘導され、dsRNA依存的に2-5Aを産生する。この2-5AによりRNaseLが活性化し、RNAを分解することによりウイルス複製を阻害する。この系は「2-5Aシステム」と呼ばれ古くから知られていたが、これ以外の2-5OASの機能についてはほとんど研究がなされていなかった。一方で、RNaseLノックアウト(KO)マウスでは、T細胞のアポトーシス感受性低下に起因する胸腺肥大が認められるなど、従来の2-5Aシステムの概念を超えたアポトーシス制御に関与していることが示唆されている。そこで、2-5OASの生理機能を個体レベルで解析することを目的として、既に樹立に成功していたOas1a, Oas1c KOマウスに加えて、新たにOas2,Oas1a/Oas2,2-5OAS-cluster(2-5OAS)KOマウスの作製を行った。 2-5OAS KOマウスを作製するために、ES細胞上で2回の相同組み換えにより約220kbの2-5OAS遺伝子クラスターの両端(Oas1aとOas2)にloxP配列を導入したES細胞を樹立した。Cre発現アデノウイルス感染により220kbを欠失させたES細胞を樹立し、キメラマウスを作製していたが、生殖系列キメラを得ることができなかった。そこで、loxP導入ES細胞からOas1a/Oas2 KO(loxP)マウスを樹立した。このマウスの受精卵にCre発現プラスミドをマイクロインジェクションする方法により、2-5OAS KOマウスの作製に成功した。現在、ヘテロ欠損マウスの状態である。また、今回新たに樹立したOas2,Oas1a/Oas2 KOマウスは外見上全く正常であり、現在のところRNaseL KOマウスで認められるような表現型は観察されていない。
|