研究概要 |
本研究はICRマウスの交配実験から新しく見つかった甲状腺機能低下症のモデルマウス(hobbit(hobt)と仮に命名)の表現型の解析と原因遺伝子のマッピングを目的とした。 hobt遺伝子を持つICR-+/hobtと近交系C57BL/6JJclを交配し、F2個体を作出し、異常個体67匹(hobt/hobt)を得られた。これらhobtホモマウスを用いて、表現型の解析及びマイクロサテライトマーカーによる原因遺伝子のマッピングを行った。さらにマッピングの結果より遺伝子解析を行い、コンジェニック系統を作製した。 hobtホモマウスの表現型は甲状腺機能低下症のモデルマウスとして報告されているcongenital goiter (cog)ホモマウスの表現型と酷似しており、成長障害、貧血、甲状腺腫を伴う甲状腺の腫大が見られた。さらに、hobtホモマウスは正常個体と比べ、血中甲状腺刺激ホルモン濃度が増加し、甲状腺ホルモン(T_3,T_4)濃度が減少していた。cog遺伝子は第15染色体上にマップされており、その原因遺伝子はサイログロブリン(Tgn)であることが報告されている。しかし、本研究からhobt遺伝子は第12染色体上の約13cM付近のD12Mit136とD12Mit171に強く連鎖していることが明らかになった。この領域にはTtgnと同様に甲状腺ホルモンの合成に必須である甲状腺ペルオキシダーゼ(Tpo)が存在する。これらのことから、hobtマウスの原因遺伝子はTpoである可能性が示唆された。さらに、現在、D12Mit136をマーカーとして遺伝子解析を行い、hobt遺伝子をC57BL/6JJcl系統に交配導入したコンジェニック系統を作製しており、このコンジェニック系統はまもなく供給可能である。
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