研究概要 |
本研究は細胞の足場ECMを自在に伸縮させることで細胞骨格形成を制御し細胞のサイトカイン等の各種液性因子に対する応答性を解析する。そのための目標として 1.機械的に収縮・膨潤して細胞骨格・形態を可変する培養基質ゲルの設計 2.原子間力顕微鏡と走査型蛍光プローブ顕微鏡観察イメージングによる細胞の膜物性計測 3.変動した膜物性と液性因子、特に各種サイトカインに対する細胞の応答性の解析 を交付期間中に達成し、細胞は細胞が接着している足場の力学的変動によって細胞骨格の再構築を行い、増殖因子などの液性因子からの応答性を変動させている可能性について検討することを目的とする。 平成16年度においてはまず、目標1を温度感受性高分子であるN-イソプロピルアクリルアミドゲルを培養基質として設計することを行った。N-イソプロピルアクリルアミドゲルは温度変化によって体積を著しく変化させる特性をもっているため、わずかな温度変化を利用することによって非接触で細胞に接着している足場から牽引力を加えることが可能であると考えた。そこで細胞接着性ECMを固定化させることを目的にN-アクリロイルアラニンを合成し、これとN-イソプロピルアクリルアミドとの共重合ゲルを様々な重合比で共重合させたゲルの条件検討を行い培養温度37℃から数度下げることによって細胞の伸展率を150%も変化させることの出来る培養ゲルの作製に成功した(第57回日本細胞生物学会年会、第42階日本生物物理学会年会)。 また原子間力顕微鏡を用いて細胞表面の弾性測定が可能になった。さらに、プローブモデルとして直径1μm、長さ10μmの高分子ゲルを作製し、そのプローブ上に細胞を培養することにも成功した(2005,Keystone Symposia, Cell Biology, U.S.A)。現在はこのプローブを細胞の力学特性計測用に開発設計中である。
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