研究概要 |
本研究では、糖鎖を結合した高分岐型ポリロタキサンを合成し、3次元方向のCD運動性と糖鎖多価効果との関連を見出すことを目的とする。本年度は、CD運動性と糖鎖多価効果を評価するための解析方法の検証のため、マルトース導入ポリロタキサンとコンカナバリンA(Con A)との結合・解離速度を表面プラズモン共鳴解析から算出した。Con A固定化表面に種々の濃度条件にてマルトース導入ポリロタキサンを添加したところ、最も分子運動性の高かったポリロタキサンでは、結合速度定数がマルトース導入CDやマルトース導入ポリアクリル酸よりも有意に大きかった。従って、ポリロタキサン特有のCD運動マルトースがコンカナバリンAの結合部位に対してエンタルピー的に有利に機能し、迅速に分子認識されていることが示唆された。 また、環状分子の分子運動性の制御に鑑みて、2,6-ジメチル-β-CD(DM-β-CD)とcucurbit[7]uril(CB[7])の異種環状分子を用いて二級アミンを有するゲスト分子との擬ポリロタキサンを合成し、CB[7]がカチオン性分子と相互作用することに着目し、pH変化による環状分子認識サイトでの移動について検討した。合成後の質量分析(MALDI-TOF-MS)から分子量がおよそ2kから20k程度まで幅広い分子量分布をもっていることが確認された。pH2ではCB[7]がPMPA上に、また2次元NMR(2D-ROESY NMR)からDM-β-CDがPPG上に存在することが確認された。一方pH11では、^1H NMRスペクトル上にて芳香環由来のピークの分裂が見られなかったことから、CB[7]はPMPA上に存在しないことが示唆された。また、2D-ROESY NMRスペクトルでは、DM-β-CDのC(3)HプロトンとPMPA及びPPGとのクロスピークが見られなかった。以上の結果、DM-β-CDとCB[7]からなる擬ポリロタキサンの合成に成功し、pH変化によってこれら異種環状分子が移動することを見出した。
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